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シンガポール半日観光②

(昨日の続き)

午後になって、再度シンガポール半日観光に参加することになった私。もちろん、午後の観光のためにバスに乗り合わせた外人はみな午前中とはメンバーは違うし、バスガイドさんも幸い違う人だった。”ふー、私のことを知っている人がいないから、気が楽だ!”

一箇所目は、もちろん観光バスに置き去りにされたインド人街。私は午前中、お世話になったシンガポールのおじいさんに出会えたら、一言お礼を言いたかった。しかし、残念ながらチラシを配っていたあの場所に、もうおじいさんの姿はなかった。”でも、このご恩はきっと忘れない。”

二箇所目は中国人街だった。雑多なざわめきと人の多さ。さらにマーライオン・・・と名所を5箇所まわる半日コースを、午前中とはうってかわって私はスムーズにこなすことができた。その理由は、なんと”バスガイドのおじさんにくっつきまわること”

今度こそ迷子になってられないと、私はことごとく自由行動中はガイドのおじさんの横、後ろとくっつきまわった。それはおじさんが休憩をしてジュースをベンチで飲んでいるときも。かたときも離れないようにした。さすがにおじさんも、私のネバネバ行動に辟易したのか、

「ねえ、あんた!シンガポールの観光にせっかくきてるんだから、ちょっとは自由に見てきなよ!なんでいつも私にくっついてくるの?!」

そう、何を隠そう私はシンガポール半日観光をやり遂げたものの、ほとんど記憶に残っているのはバスガイドのおじさんの背中や横顔、緑の服ばかり。肝心のシンガポールの美しさをこの目にとどめることなく、半日観光を終えたのだった。

でも、景色は心に残ってなくても、あの迷子になったときのおじいさんの優しさだけは今なお旅の思い出としてくっきり残っている。

シンガポール半日観光①

「今、シンガポール航空のチケットを購入した人は、特製バックとシンガポール半日観光がついてくる!」その言葉に誘われ、私は女一人旅をすることにした。

海外旅行でヨーロッパまでいくのに比べたら、シンガポールなんてあっという間だ。私は着いた翌日に半日観光を予約し、自分の自宅とはまるで異なる別世界のホテルの部屋でくつろぎまくっていた。

翌朝、ビーーーーン!枕元の電話がけたたましくなった。私は寝起きがよくない。「ハロー?」とでると、フロントが「今日、シンガポール半日観光をされますよね。8時にはロビーにおこしください」「はーい」と電話をきり、時計を見る。”まだ8時には時間があるじゃんか”

私は再びしばしの眠りについた。すると再びビーーーーーン!と電話が鳴った。今度はフロントのおじさんはやや早口に私にいった。「どうしたんです?8時ですよ!早くきてください。」私は「え?まだ8時には時間があるじゃないですか?」と言った瞬間だった。

「あなた、もしかして時計の時刻をなおしてませんね!ここはシンガポールです!時差があるんですよ!!」「・・・・・・」そうだった。私は枕の脇においた時差をなおしていない自分の腕時計をさきほどから眺めていたのだ。

それからは、消防隊にでも加われそうな勢いで服をを着替え、メイクをし、持ち物をつかんでバッタバタバタとロビーに走った。

すでに大型バスがホテルの前でたくさんの外国人を乗せ、待っていた。”sorry sorry”と腰をかがめて謝りながら乗車する私を、どの外人も冷たい視線で見、無視した。きっと誰もが”このジャパニーズ一人のために出発を延々と待たされたのか”と思っているに違いない。

私が乗り込んだバスは、とりあえず一箇所目の観光地、インド人街にたどりついた。ここで10分ほど停車し、周辺のインドの織物などを自由に買い物できるという。私はこういうとき、自分が迷子になりやすい性質であることをよくしっている。そのときのために、バスにのっている人のなかで、もっとも目立つ人、太ったピンクのワンピースの西洋人を目印にすることにした。彼女を常に視界にいれていれば、必ずバスに戻ってくることができる。

しばらくは私の視界に彼女は入っていた。しかし・・・・インドの多様な織物を眺め、買おうかどうか迷っているうちに、気づけばピンクのデブちゃんは私の周囲からいなくなっていた。”えー!今度バスに乗り遅れたら、朝の気まずさの繰り返しだ!!”

私はバスの止まっていたあたりに戻った。ない!似たバスに駆け寄るが、ちがう。同じような場所をグルグル走り回り、観光バスを探す私。どうやらバスは見学時間10分が経過した時点で、容赦なく私を置き去りにし、次の観光地にいってしまったようだ。

複雑な気持だった。観光バスに置き去りにされた悲しさと同時に、あのバスに再び”sorry sorry”と言いながら乗らずにすんだからだ。

すると、同じ場所をグルグル走り回る私に、街頭でチラシを配っていたおじいさんがよってきた。「どうしたんだい?」「迷子になりました。のっていた観光バスが行ってしまったんです。」とやや半泣きで伝えた。

おじいさんは、私を突如公衆電話のある場所までつれていった。そこにはすでに3,4人が電話をかけるために並んでいた。”おじいさんは何をするんだろう?”と思っていると、「すみませんが、この日本人の女の子は迷子になってしまったらしい。みなさん、彼女がバス会社に連絡を早くできるよう、早く電話をかけさせてあげてくれまいか」

なんと、みなさんは私にどうぞ、どうぞと順番をゆずってくれたのだ。しかも、おじいさんは電話に自分の財布からコインをいくつかいれたのだった。私はとにかくバス会社に連絡をし、一箇所目で迷子になり、バスにおき去られたことを告げると、「ホテルに一度もどって、午後の半日観光に再び参加してください」といわれた。

すぐに私はそのことをチラシ配りのおじいさんに伝え、電話代のコインを返そうとすると、「シンガポール人は、悪い人ばかりじゃない。またこの国にきなさいよ」と言いながらタクシーを呼びとめ、中に私を押し込んだ。

「おじーさーん!」私は両腕をちぎれんばかりにタクシーの中から振った。ありがたかった。こうして知らぬ町で親切な人に出会えたことが。そしてホテルに戻った私は、再び午後から半日観光のバスに乗り込み、あのインド人街に行くことになるのだった。(明日につづく)